プロボクシング ライト級(61・2キロ以下)10回戦 伊藤雅雪―三代大訓(26日、東京・墨田区総合体育館)
前WBO世界スーパーフェザー級(58・9キロ)王者・伊藤雅雪(29)=横浜光=と東洋太平洋同級王者・三代大訓(26)=ワタナベ=が25日、前日計量に臨み、伊藤はリミットから100グラム軽い61・1キロ、三代はリミットで一発クリアした。戦績は伊藤が26勝(14KO)2敗1引き分け、三代が9勝(3KO)1分け。
「1階級上げて、体作りはしやすかった。フィジカルトレーニングもやって筋肉も大きくなった。ギリギリまでスパーリングをやって、納得のいく、良い調子です」。オンライン記者会見に応じた伊藤は手応え十分の様子。コロナ禍に加え、故障などもあって昨年9月以来の試合となり、「久しぶりで不安もあるが、不安とワクワクの入り混じった」感覚という。だが「悲観はしていない」と言い切った。三代については「ディフェンスもいいし、何と言ってもジャブがいい選手。プレッシャーをかけて、1ラウンドごと明確にポイントをとっていきたい」と意気込んだ。
当初は11月5日に行われる予定だったが、伊藤が急性虫垂炎で内視鏡手術を受けたことなどもあり、今月26日に延期された。伊藤は昨年5月に世界王座を奪われたものの、9月の再起戦で勝利。今年2月2日に中国・海南島でのノンタイトル戦を予定していたが、腕の故障により回避した。今回から階級をライト級に上げて世界を目指していくことになる。「今回は世界に向けた試合ではないけど、重要な試合となる。国内でアピールするためにも強い選手とやる必要がある」と三代との対戦に応じた。
今回、スパーリングは100ラウンドほど実施し、元世界3階級制覇王者ホルヘ・リナレス、元東洋太平洋ライト級王者・中谷正義(ともに帝拳)らとグラブを合わせた。新型コロナウイルス感染予防のため、スパー前には毎回、抗原検査を行ったという。試合2週前にはPCR検査を受け、家とジムの移動はすべて車と、徹底して第三者との接触を避けるなどして対策を講じた。
中谷はラスベガスで派手な逆転KO勝ちを収め、一躍世界にその名をとどろかせた。「刺激になりました。一緒にスパーしていた選手が活躍して、うれしい気持ちが35%、悔しい気持ちが65%ですね」と伊藤。「僕も世界でアピールしたいという気持ちになった」と本音も口にした。三代に勝てば「(日本&アジア3冠の)吉野修一郎選手(三迫)とやりたい。いや、やるつもりでいます」と闘志を見せた前世界王者。契約するトップランクから海外での試合オファーの可能性もある。伊藤は「世界2階級制覇」を見据えた戦いをスタートさせる。
恒例となっていたロサンゼルスキャンプは今回行えなかったものの、同地で世話になっている岡辺大介トレーナーはすでに来日し、当日もセコンドにつく。「自分なりの狙いがあるので、大介さんと戦術的なことを確認しています。その作戦を実行していきたい」(伊藤)
「派手な打ち合いにはならない。きっと“斬り合い”になる。接戦になるでしょう。そこでまずは自分に勝つこと。休もうとする弱い自分に勝つことが、伊藤選手に勝つカギでもある」(三代)
伊藤も認める左ジャブの名手・三代。そのジャブに、磨きをかけたジャブで伊藤が対抗するのか。得意と自認する右ストレートで、ジャブを抑止するのか。ともにカウンターも上手く、ハイレベルな技術戦、目に見えない戦いと、玄人を唸らせる展開になること必至だ。
「これに勝って、吉野選手と戦いたい」。伊藤、三代ともに、日本・東洋太平洋・WBOアジアパシフィックの3冠王・吉野修一郎(三迫)の名を挙げた。ラスベガスで快挙を遂げた中谷を筆頭に、国内ライト級は日本ランクを見渡しても強豪ぞろい。空前の活況を呈している。
「もう、ライト級で戦っていきます」(伊藤)
「スーパーフェザー級の王座は返上します。ライト級でずっとやっていきます」(三代)
ふたりとも、このクラスを活性化させる気満々だ。